広大な自然と多文化社会が共存するオーストラリアは、英語学習はもちろん、環境・歴史・異文化理解など、さまざまな学びが得られる修学旅行先として高い人気があります。
一方で、都市ごとの特徴やモデルコース、安全面、費用の目安など、事前に知っておきたいポイントも多いのが実情です。
この記事では、修学旅行で押さえるべきおすすめ都市や観光スポット、教育的な体験プログラム、計画の立て方まで、最新情報を整理して分かりやすく解説します。
目次
オーストラリア 修学旅行 おすすめの基本情報と魅力
オーストラリアは、日本から直行便でアクセスしやすく、時差も比較的小さいため、修学旅行の行き先として長年選ばれてきました。
気候は地域によって異なりますが、年間を通して温暖で過ごしやすく、屋外学習やアクティビティを取り入れやすいことも大きな魅力です。
さらに、イギリス文化を背景とする英語圏でありながら、多民族国家として多様な文化が共存しているため、国際理解教育の観点からも高く評価されています。
教育面では、世界的に評価の高い大学や研究機関、環境保護施設、先住民文化センターなど、学びにつながる訪問先が充実しています。
また、治安が比較的安定しており、公共交通機関も整備されていることから、団体行動がしやすい点も修学旅行向きです。
本章では、なぜオーストラリアが修学旅行におすすめなのか、その基本的な魅力と前提知識を整理します。
オーストラリアが修学旅行先として選ばれる理由
オーストラリアが修学旅行で人気を集める大きな理由の一つは、学びとレジャーのバランスの良さです。
シドニーやメルボルンでは歴史や都市文化、キャンベラでは政治や国の仕組み、ケアンズでは世界自然遺産の海や熱帯雨林と、訪問先ごとに明確なテーマ学習を設定しやすい環境があります。
これにより、教科学習と現地体験を組み合わせた探究型のプログラムを組み立てやすくなります。
また、ホストファミリーとの交流や現地校との交流プログラムが整っている地域も多く、生きた英語に触れながらコミュニケーション力を育成できる点も評価されています。
交通やインフラが整っているため、団体での移動が比較的スムーズで、現地の教育旅行専門の旅行会社や施設も数多く存在します。
こうした受け入れ体制の充実が、修学旅行先として選ばれ続ける大きな要因です。
修学旅行で押さえたいオーストラリアの基礎知識
計画段階で押さえておきたい基礎知識として、まず季節と気候があります。
南半球に位置するため、日本とは季節が逆転し、日本の春休みはオーストラリアでは秋、日本の夏は冬にあたります。
シドニーやメルボルンは温帯性気候で四季があり、ケアンズは熱帯性気候で年間を通して暖かく、雨季と乾季がはっきりしています。
訪問時期に合わせた服装や活動内容の検討が重要です。
通貨はオーストラリアドルで、都市部ではクレジットカードや交通系カードの普及が進んでいますが、生徒には使い過ぎ防止の観点から現金と組み合わせた管理が望まれます。
公用語は英語ですが、移民が多く多言語が飛び交う環境であることから、異文化理解の観点で事前学習を行うと、現地での学びがより深まります。
また、水道水は飲用可能な地域が多いものの、学校単位ではミネラルウォーターを推奨するケースもあり、事前確認が必要です。
治安・衛生面から見た安心ポイント
オーストラリアは、先進国の中でも比較的治安が良いとされていますが、都市部ではスリや置き引きなどの軽犯罪には注意が必要です。
修学旅行では、貴重品の管理ルールを明確にし、単独行動を避けるといった基本的な安全教育を出発前に徹底しておくことが大切です。
夜間の繁華街は避け、必ず引率教員の指示に従うことをルール化しておくと安心です。
衛生面では、医療水準は高く、都市部には日本語対応が可能なクリニックや病院もあります。
ただし、日本と比べて医療費が高額となるため、海外旅行保険への加入は必須です。
食事に関しては、アレルギー対応や宗教・ベジタリアン対応も進んでいますが、事前に参加生徒の情報を整理し、旅行会社や宿泊施設と十分に共有しておくことで、より安全で配慮の行き届いた修学旅行を実現できます。
都市別に見るオーストラリア修学旅行のおすすめエリア
オーストラリアと一口に言っても、都市によって学べる内容や雰囲気、アクティビティは大きく異なります。
修学旅行の目的に応じて、どの都市を中心にコース設計をするかが重要なポイントとなります。
英語学習を重視するのか、自然環境や生物多様性を学びたいのか、政治や歴史、先住民文化に重点を置きたいのかによって、最適な都市は変わってきます。
ここでは、日本からの修学旅行で特に人気の高いシドニー、ケアンズ、ゴールドコースト、メルボルン、キャンベラの特徴と、どのような教育テーマに向いているかを整理します。
複数都市を組み合わせる周遊型のコースを検討する場合でも、各都市の役割を明確にしておくと、時間を有効に使ったプログラム設計が可能になります。
シドニー:世界的都市で歴史と多文化を学ぶ
シドニーは、オペラハウスやハーバーブリッジに代表される世界的観光都市でありながら、移民の多い多文化都市としても知られています。
歴史的建造物が残るロックス地区では、イギリスからの囚人流刑地としての成り立ちや開拓の歴史を学ぶことができます。
また、博物館や美術館が充実しており、植民地時代から現代に至るまでの社会の変化を総合的に学ぶことができます。
教育旅行向けのプログラムも多く、港を活かした海洋学習、フェリー移動を含めた公共交通体験、市内ウォーキングによる都市探検など、多様な体験が可能です。
英語研修と都市文化体験をバランスよく取り入れたい学校に特におすすめのエリアです。
ケアンズ:グレートバリアリーフと熱帯雨林で環境学習
ケアンズは、世界最大級のサンゴ礁グレートバリアリーフと、世界遺産指定の熱帯雨林を有する、環境学習の宝庫ともいえる地域です。
サンゴ礁保護活動や海洋生物の観察プログラム、マングローブ林のフィールドワークなど、環境問題を体感しながら学べるアクティビティが数多く用意されています。
また、熱帯雨林では、先住民アボリジニの文化紹介やブッシュタッカー体験なども行われています。
気候は年間を通して温暖で、屋外活動に適していますが、日差しが強いため、帽子や日焼け止めなどの紫外線対策が必須です。
自然環境に直に触れながら、地球温暖化や生物多様性保全の重要性を学びたい修学旅行には、非常に適したエリアです。
ゴールドコースト:ビーチリゾートでアクティブ体験
ゴールドコーストは、長く続くビーチとリゾート施設が魅力の観光都市で、テーマパークやマリンスポーツなどアクティビティが充実しています。
修学旅行では、サーフライフセービング体験やビーチクリーン活動を通じて、海の安全や環境保全について学ぶプログラムが人気です。
また、内陸部に広がる国立公園では、熱帯雨林トレッキングや野生動物観察も可能です。
英語研修とホームステイを組み合わせたプログラムも多く、午前は語学学校でのレッスン、午後はアクティビティという構成が取りやすい地域です。
楽しさと学びを両立させながら、生徒のモチベーションを高めたい学校に適した選択肢と言えます。
メルボルン・キャンベラ:芸術・政治・先住民文化を深く学ぶ
メルボルンは、芸術・スポーツ・カフェ文化が発達した知的な雰囲気の都市で、路地裏アートやデザイン、音楽など、創造性を刺激するプログラムが充実しています。
ビクトリア州立図書館や国立美術館では、欧州移民を中心とした都市の成り立ちや、多文化社会の発展を学ぶことができます。
また、トラムなど公共交通インフラを生かした「持続可能な都市づくり」をテーマにした学習も行いやすい点が特徴です。
一方、首都キャンベラは、連邦議会や各国大使館、戦争記念館など、政治や国際関係について学べる施設が集まっています。
議事堂見学や模擬投票体験など、民主主義の仕組みを体感するプログラムがあり、公民や政治経済の学習と結び付けたい学校に向いています。
また、先住民文化に焦点を当てた国立博物館もあり、オーストラリアの歴史を多角的に理解することができます。
修学旅行で行きたいオーストラリアの人気観光スポット
オーストラリアの修学旅行では、単なる観光にとどまらず、見学を通じて学びが得られるスポットを選ぶことが重要です。
代表的なランドマークや世界遺産はもちろん、科学館、動物園、文化施設など、教育的価値の高い場所が豊富に存在します。
ここでは、特に修学旅行で訪問しやすく、団体受け入れに慣れた定番スポットをピックアップして紹介します。
訪問先の選定にあたっては、生徒の年代や教科との関連、滞在都市との距離などを総合的に考える必要があります。
また、人気スポットは時期によって混雑するため、事前の予約や時間帯の工夫が求められます。
以下のスポットを組み合わせて、自校の教育方針に合ったコースを検討してみてください。
シドニー・オペラハウスとハーバーブリッジ
シドニー・オペラハウスは、世界的に有名な近代建築であり、ユネスコ世界遺産にも登録されています。
外観見学だけでなく、館内ツアーでは建築設計の工夫や音響設計、オーストラリアの文化政策についても学ぶことができます。
生徒向けの教育ツアーを提供しており、英語でのガイドを通して実践的なリスニングの機会にもなります。
隣接するハーバーブリッジは、シドニー湾を一望できる絶好のビュースポットです。
安全管理が厳格なため、橋の上を歩くブリッジクライムは年齢制限や健康条件を事前確認する必要がありますが、周辺の展望エリアからでも美しい港湾景観を楽しめます。
都市景観、交通インフラ、観光資源の活用について考えるきっかけとなる場所です。
グレートバリアリーフと海洋保護プログラム
グレートバリアリーフは、地球最大級のサンゴ礁として知られ、豊かな海洋生態系を育んでいます。
修学旅行では、専用クルーズ船で沖合のリーフに向かい、シュノーケリングやグラスボートによる観察を行うプログラムが一般的です。
一部の事業者では、サンゴの白化や気候変動の影響について解説する教育プログラムも用意されています。
サンゴの植え付け体験やビーチクリーン活動を組み合わせることで、自然の美しさと同時にその脆さや保護の必要性を実感することができます。
生徒にとっては、教科書では得られない臨場感のある環境学習となり、将来の進路や価値観に影響を与える経験となり得ます。
ブルーマウンテンズ国立公園での自然体験
シドニー郊外に位置するブルーマウンテンズ国立公園は、ユーカリの森が広がる世界遺産の山岳地帯です。
切り立った渓谷と奇岩群、深い森が織りなす雄大な景観は、都市部では味わえないスケール感があります。
展望台からの眺望に加え、短時間のブッシュウォークコースも整備されており、体力に応じて無理のない自然体験が可能です。
地形や植生の成り立ち、先住民の伝承、火災と生態系の関係など、理科や地理、公民にまたがる学習テーマが豊富です。
シドニーから日帰りで訪問できるため、都市研修と自然体験を組み合わせたい場合に非常に使い勝手の良いスポットと言えます。
コアラやカンガルーと出会える動物園・保護区
オーストラリア固有の動物であるコアラやカンガルーとの出会いは、多くの生徒にとって修学旅行のハイライトとなります。
タロンガ動物園やローンパイン・コアラサンクチュアリなどでは、保護活動の説明を受けながら、動物との距離の取り方や観察のマナーについて学ぶことができます。
直接触れ合えるプログラムもありますが、動物福祉に配慮した運営が行われているかを確認することが大切です。
近年は、動物園・保護区における絶滅危惧種の保全プロジェクトや繁殖計画に関する展示が充実しており、生物多様性の保全という視点からも学びが深まります。
単なる「かわいい体験」にとどめず、環境や命の尊さを考えるきっかけとして位置付けることで、教育的価値が高まります。
学びを深める教育プログラムと体験アクティビティ
修学旅行を一過性の思い出で終わらせず、学習成果につなげるためには、現地での教育プログラムや体験アクティビティの質が重要です。
オーストラリアでは、学校団体向けにカスタマイズされたプログラムを提供する施設や教育機関が多く、英語学習、環境教育、異文化理解、キャリア教育など、さまざまなテーマでの学びが可能です。
ここでは、代表的な教育プログラムとして、語学学校での英語レッスン、ホームステイや現地校交流、環境・SDGs関連プログラム、アボリジニ文化体験などを取り上げ、それぞれの特徴と導入のポイントを解説します。
学校の教育方針や学年の特性に合わせて、組み合わせを検討すると良いでしょう。
語学学校での英語レッスン
語学学校での英語レッスンは、中高生の修学旅行プログラムとして定番のメニューです。
現地の語学学校では、学校団体向けにレベル別クラス編成や、アクティビティと連動した実践的な会話レッスンを提供しているところが多くあります。
現地講師とのやり取りを通じて、教室で学んだ英語を実際に使う経験が得られる点が大きなメリットです。
レッスン時間は半日から数日間にわたる集中プログラムまで幅があり、他の見学とのバランスを考えた設計が必要です。
出発前に簡単な自己紹介や質問フレーズを練習しておくと、生徒が安心して発話でき、学習効果も高まります。
修学旅行後の授業で振り返り活動や英語プレゼンテーションを行えば、学びの定着にもつながります。
ホームステイや現地校交流
ホームステイは、オーストラリアの家庭生活や文化に触れながら英語を使う貴重な機会です。
ホストファミリーとの会話を通じて、教室の英語では学びきれない表現や価値観の違いを体感できます。
朝夕の過ごし方、食事のマナー、家事の分担など、日本との違いを通して自国文化への理解も深まります。
現地校交流では、同年代の生徒との共同授業やスポーツ交流、文化紹介プレゼンテーションなどが行われます。
英語力に不安がある生徒も、ゲームやグループワークを通じて自然にコミュニケーションを取ることができるよう工夫されています。
事前に自校の紹介ポスターやスライドを準備しておくと、交流がスムーズになり、生徒の主体性も高まります。
環境・SDGsをテーマにしたフィールドワーク
オーストラリアの豊かな自然環境は、環境教育やSDGsをテーマにしたフィールドワークに最適です。
グレートバリアリーフや国立公園では、生態系の観察や外来種問題、火災と植生の関係などについて、専門ガイドから説明を受けながら学ぶことができます。
都市部でも、リサイクル施設や水資源管理施設の見学、サステナブルな建築物の視察など、環境配慮の取り組みを学べる場所が多くあります。
これらの体験を通じて、生徒は地球規模の環境問題を自分ごととして考えるきっかけを得られます。
事前にSDGsの該当目標を学び、現地で気づいたことを帰国後の探究学習や総合学習のテーマにつなげることで、継続的な学びが期待できます。
フィールドワークでは、観察記録や撮影メモを整理するワークシートの準備も有効です。
アボリジニ文化体験と歴史理解
オーストラリアの先住民であるアボリジニの文化や歴史を学ぶことは、この国を理解する上で欠かせない要素です。
各地の先住民文化センターでは、伝統的な楽器ディジュリドゥの演奏体験、アートワークショップ、ブッシュタッカー(伝統的な食材)の紹介など、体験型プログラムが提供されています。
また、先住民ガイドによる自然観察では、土地と精神文化の結び付きを学ぶことができます。
同時に、植民地化の歴史や同化政策の影響、現在の和解に向けた取り組みについても学ぶことで、多文化社会の光と影の両面を理解することが重要です。
日本の歴史や少数者の権利問題と関連付けて考えることで、より深い人権教育や国際理解教育につながります。
事前に用語や背景知識を簡単に整理しておくと、現地での説明が理解しやすくなります。
時期・日数・費用から考えるおすすめモデルコース
オーストラリアへの修学旅行を計画する際には、渡航の時期、滞在日数、予算のバランスを取ることが重要です。
日本からのフライト時間は直行便で約8〜10時間となるため、現地での学習時間を十分に確保するには、最低でも4〜5日以上の行程が望まれます。
さらに、季節によって航空運賃や現地の混雑状況も変動するため、希望するプログラムと合わせて検討する必要があります。
ここでは、一般的な中高生向けを想定したおすすめの渡航時期、日数別のモデルコース例、費用の目安を紹介します。
あくまで一例ではありますが、全体像を把握することで、自校に合った計画立案の参考となるはずです。
ベストシーズンと避けたい時期
オーストラリアのベストシーズンは、目的地や目的によって異なりますが、日本の春(3〜4月)と秋(9〜11月)は、比較的気候が安定しており、修学旅行に適した時期とされています。
シドニーやメルボルンでは、暑過ぎず寒過ぎない快適な気温で、屋外活動もしやすい環境です。
ケアンズなど熱帯地域では、雨季と乾季の違いを考慮する必要があります。
一方で、日本のゴールデンウィークや年末年始は航空券が高騰しやすく、現地も観光客で混雑しがちです。
また、南半球の真夏にあたる12〜2月は、地域によっては高温や日差しの強さから、屋外活動に制約が出る場合もあります。
学校の行事予定や試験日程と合わせて、教育的効果と安全性、費用のバランスを考えた時期選定が求められます。
4〜6日間で組む代表的なモデルプラン
滞在日数によって、組めるプログラムの内容や都市数が変わってきます。以下は一般的なモデル例です。
| 日数 | モデルコース例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 4日間 | シドニー集中コース 都市研修+自然体験(日帰り) |
短期間で都市と自然をバランス良く体験。初の海外修学旅行向け。 |
| 5日間 | シドニー+ブルーマウンテンズ または ケアンズ集中(グレートバリアリーフ) |
語学体験や環境学習をしっかり組み込める標準的日数。 |
| 6日間 | シドニー+ケアンズの2都市周遊 | 都市文化と世界遺産の両方を深く学べる充実プラン。 |
4日間の場合は、シドニー到着後に市内観光と簡単なオリエンテーションを行い、翌日にブルーマウンテンズなどへ日帰り自然体験、最終日は自由研究やグループ活動を組み込む構成が一般的です。
5〜6日間あれば、語学学校での英語レッスンや現地校交流を組み込み、より教育的な深まりを持たせることができます。
予算の目安と費用を抑えるポイント
オーストラリア修学旅行の費用は、出発地、航空会社、時期、滞在都市、プログラム内容によって大きく変動しますが、一般的には1人あたり20万〜40万円程度の幅で設定されることが多いです。
直行便か経由便か、ホテルかホームステイか、テーマパークを含めるかといった要素も、総費用に影響します。
費用を抑えるには、いくつかの工夫が有効です。
例えば、ピークシーズンを避ける、訪問都市を1〜2都市に絞る、テーマパークを厳選し教育的価値の高い施設を優先する、といった方針が考えられます。
また、現地での食事をすべてレストランにせず、フードコートや軽食を組み合わせることでも、一定のコスト調整が可能です。
学校として事前に予算上限を明確にし、その範囲で最大限の教育効果が得られるよう旅行会社と協議することが重要です。
安全対策と現地での過ごし方のポイント
海外修学旅行では、安全確保が最優先事項となります。
オーストラリアは比較的治安の良い国とされていますが、日本とは異なる文化やルールがあるため、事前指導と現地での行動管理が欠かせません。
特に、交通ルール、日差しや気温への対策、医療体制の理解など、地域特有のポイントを押さえておく必要があります。
この章では、保護者や学校が特に気にする安全面について、医療・保険、危機管理、日常の過ごし方とマナーの観点から整理します。
適切な準備とガイドラインがあれば、生徒は安心して学びと交流に集中することができ、全体として充実した修学旅行になります。
医療体制と海外旅行保険のポイント
オーストラリアの医療水準は高く、都市部には設備の整った総合病院やクリニックが多数あります。
ただし、診察費や検査費、入院費は日本に比べて高額になることが多く、数日の入院でも相当な金額に達する場合があります。
そのため、海外旅行保険への加入は必須であり、治療費や救急搬送、通訳サービスなどがカバーされるプランを選ぶことが重要です。
学校団体の場合、包括的な団体保険を利用するケースが多いですが、既往症の扱いや補償上限額、キャッシュレス診療の可否など、細部を確認しておきましょう。
また、生徒には常備薬を持参させるとともに、アレルギーや持病の情報を事前に把握し、引率教員間で共有しておくことが安全管理上の基本となります。
トラブルを避けるための行動ルール
現地でのトラブルを避けるためには、出発前のオリエンテーションで行動ルールを具体的に示すことが重要です。
貴重品は必要最低限にとどめ、パスポートや現金はホテルのセーフティボックスや貴重品ポーチで管理する、単独行動や無断外出を禁止する、人通りの少ない場所や夜間の繁華街には近づかないといった基本ルールを徹底します。
公共の場での大声や迷惑行為を慎むことも国際マナーとして指導が必要です。
また、交通ルールにも注意が必要です。
オーストラリアは日本と同じ左側通行ですが、信号のシステムや横断方法が異なることがあります。
横断歩道や信号を必ず守り、車道への飛び出しをしないよう繰り返し指導しましょう。
グループごとに集合時間と集合場所を明確にし、緊急連絡先カードを常に携帯させることも有効な対策です。
気候・紫外線対策と健康管理
オーストラリアは紫外線が非常に強く、短時間でも日焼けや熱中症のリスクがあります。
屋外活動が多い修学旅行では、帽子、サングラス、長袖の上着、SPFの高い日焼け止めの使用を生徒全員に義務付けるくらいの意識が必要です。
こまめな水分補給や休憩時間の確保も、健康管理の基本となります。
また、地域によっては朝晩と日中の寒暖差が大きく、薄手の上着や重ね着ができる服装が適しています。
食事や生活リズムの変化による体調不良も起こりやすいため、初日は特に無理のないスケジュールを組み、早めの就寝を心掛けさせると良いでしょう。
体調不良を我慢せず早めに申告するよう、生徒に繰り返し伝えておくことが重要です。
学校・保護者が押さえておきたい準備と事前学習
オーストラリア修学旅行の教育効果を最大限に高めるには、事前準備と事前学習が欠かせません。
パスポートやビザ、保険といった事務的手続きに加え、現地でのマナー、学習テーマ、英語表現などをあらかじめ学んでおくことで、生徒は安心して積極的な活動に参加できるようになります。
保護者との情報共有も、安心感や理解を得る上で重要なプロセスです。
この章では、具体的にどのような準備をいつから進めるべきか、またどのような事前学習が現地での学びを深めるのかを整理します。
計画段階から振り返りまでを含めた一連のプロセスを意識することで、修学旅行全体が一つの大きな学習プログラムとして機能するようになります。
パスポート・ビザ・保険などの渡航準備
まず最初に取り組むべきは、パスポートの取得状況の確認です。
有効期限が帰国予定日から一定期間以上残っているかを早めに確認し、未取得の生徒には学校から案内を出して手続きを進めてもらいます。
オーストラリア入国には通常、電子渡航許可(ETASなど)が必要となるため、旅行会社や学校が一括して申請するケースが一般的です。
海外旅行保険については、前述の通り、医療費や救援者費用、賠償責任などをカバーできるプランを選定します。
加えて、学校として緊急時の連絡体制や情報共有方法をあらかじめ整理し、保護者にも周知しておくと安心です。
渡航準備は早い段階からスケジュールを示し、各家庭が余裕を持って対応できるよう配慮することが重要です。
英語・地理・歴史の事前学習で理解を深める
現地での学びを深めるためには、英語だけでなく、オーストラリアの地理・歴史・社会についての基礎知識を事前に身に付けておくことが有効です。
例えば、主要都市の位置関係、気候帯の違い、先住民の歴史や移民政策の変遷などを授業やホームルームで扱うことで、現地で見聞きする情報がより立体的に理解できるようになります。
英語については、自己紹介、質問表現、感謝やお願いのフレーズなど、実際に使う可能性の高い表現に絞って練習することが効果的です。
シミュレーションロールプレイを行い、レストランでの注文や道の尋ね方などを体験しておくと、生徒の不安軽減につながります。
事前学習の成果は、現地でのフィールドノート作成や事後の発表に活用できます。
事前オリエンテーションと保護者説明会のポイント
事前オリエンテーションでは、旅行の目的、全体スケジュール、行動ルール、安全対策、持ち物などを生徒に丁寧に説明します。
単なる注意事項の伝達だけでなく、「なぜこのルールが必要なのか」「どのような学びが期待されているのか」を共有することで、生徒の主体性を引き出すことができます。
グループ編成や係の役割分担も、この段階で明確にしておくとスムーズです。
保護者説明会では、安全対策や医療・保険の内容、費用の内訳や支払いスケジュール、緊急時の連絡体制を具体的に伝えることが重要です。
また、ホームステイや現地校交流がある場合は、その意義や活動内容を分かりやすく説明し、不安や疑問に丁寧に答えることで、協力と理解を得やすくなります。
説明資料を紙面やデジタルで配布し、いつでも見返せるようにしておくと安心です。
まとめ
オーストラリアは、英語学習、多文化理解、環境教育、歴史学習など、さまざまな学びの要素を一度に体験できる修学旅行先として非常に魅力的です。
シドニーやメルボルンといった大都市から、ケアンズやゴールドコーストの自然豊かな地域、政治の中心であるキャンベラまで、都市ごとに特徴が異なるため、学校の教育目標に応じたコース設計が可能です。
語学学校での英語レッスン、ホームステイや現地校交流、環境・SDGsフィールドワーク、アボリジニ文化体験などを組み合わせることで、単なる観光にとどまらない、深い学びと成長の機会を生徒に提供できます。
一方で、安全対策や事前学習、保護者との連携といった準備も欠かせません。
この記事で紹介した都市別の特徴や人気スポット、モデルコース、準備のポイントを参考に、自校の教育方針や生徒の実態に合った修学旅行プランを検討してみてください。
適切な計画とサポートがあれば、オーストラリアでの修学旅行は、生徒にとって一生の財産となる経験になるはずです。
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